【長編】Sweet Dentist
「バーカ、冗談だよ。
嫌がる女を取って喰うほど俺は飢えちゃいねぇって。
そんなにビビんなよ」

「…ん…決心して来たつもりだったんだけど…ね」

「いいよ。時間はまだ沢山ある。
俺達は始まったばかりだろう?
それより… 本当に一緒に来てくれるなんて…嬉しかったよ。ありがとうな」

「ううん、あたしも傍にいたかったから。
…でも5日間でこんなに色んなことが動くなんて、思ってもみなかったわ」

俺も同じ事を考えていただけに、思わず頬が緩んでギュッと抱きしめる腕に力がこもった。

「ああ…こんなことになるなんて…本当に信じられないよ。
全部千茉莉のおかげだ」

「…あたし?」

「そう、千茉莉に出逢ったから…俺は幸せになれた。
失っていたものを取り戻せたし、大切なことにも気付いた。
何より俺を癒し、愛してくれている。
…この先どんな事があっても、俺はお前さえいてくれたらどんな事でも乗り越えられると思うよ」

「響さん…」

「…千茉莉…抱きしめて?」

千茉莉の両腕がしなやかに伸びて俺を抱きしめる。

背中に触れる小さな手の温もりが、どうしてこんなにも安心できるのかといつも思う。


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