【長編】Sweet Dentist
千茉莉の誕生日の夜、俺はタクシーに乗り込んで直ぐに、父に電話をし実家へと向かった。

既に日付が変わろうとしている時間に、父が起きているかは微妙だったが、翌日から1週間の休みを取っている父を、どうしても今夜捕まえて話をしておきたかった。

別に父が休暇にどこへ行こうが何をしようが、普段なら気にもならないのだが、今回ばかりは千茉莉の父親から聞いた事実を確かめなければ、一週間生殺しの状態で待ち続けなくてはならなくなる。

それは避けたかった。

今すぐに母の生死を確かめたい。

今すぐに父の本当の気持ちを訊きたい。

今すぐに真実を知りたい。

その気持ちは実家が近づくにつれ大きく膨らんでいく。

これまであえて避けてきたはずの事を、一度受け入れると決めたら、自分でも驚くほどに勢いが付いていた。


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