【長編】Sweet Dentist
「そのうちっていつ?」

「…そうだな。最後の治療が終わった時かな?」

「最後の治療が終わったら…もう会えなくなるから?」

「千茉莉は…俺に会えなくなったら淋しいとか思ったりするのか?」

「…っ、そんなこと思うわけ…」

「俺は、おまえが来なくなったら淋しいような気がする」

突然の言葉に何も言えなくなった。

頬にあたる氷が熱で溶けているのは打たれた頬が熱いから?

それとも先生の言葉に頬がもっと熱を帯びてしまったから?


「千茉莉、本当のキス教えてやるよ」


響先生がそっとあたしの額に唇を寄せる。


「ゴメンな…こわかったんだろう?
震えていたよな。
…千茉莉がああして俺を抑えてくれなかったら、俺、真由美を殴っていたかもしれない」


額に触れた唇は、閉じた瞼に、頬にと少しずつキスの雨を降らせて移動していく。


唇の触れた先から甘い甘い感覚が広がって

あたしを安心させるように包んでいく。


なんだろうこの感覚・・・。

温かくて、優しくて、心が満たされるような甘い感じ…。


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