【長編】Sweet Dentist
「宙…ごめん。あたし好きな人がいるの」

宙は凄くショックを受けたみたいだった。

明らかに動揺を隠しきれていなかった。

「誰だよ。おまえの好きな奴って。今までそんな話聞いたことも無いぞ?」

「あたしだってつい最近自分の気持ちに気付いたんだもん。それまではまさかその人を好きなんて考えた事も無かったし、彼にとってはあたしはきっと対象外だもん」

思い出すと切なくなって涙が滲んできてしまう。

響先生はあたしを女性として見てくれる事はあるんだろうか。

ううん、無いと思う。

明日の治療が終わったら、きっともう会う事も無いんだと思う。

「だったらやめとけよ。そんなヤツ。俺はずっと千茉莉を見てきたんだ。対象外なんて思っているヤツより俺にしておけよ」

「何バカな事言ってるのよ」

「バカな事じゃない。俺は本気だ!」

「……困るよ。宙はそんな風に見れない」

「俺のほうが対象外だって言うのか?やってらんねぇな」

「宙はずっと友達だったじゃない」

「おまえの前ではな。でも心の中じゃずっと想っていた。いつかおまえを俺の彼女にするって決めていたんだ」



「勝手に決めないで…―――!」







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