【長編】Sweet Dentist
千茉莉が同じ年頃の男に抱きしめられ唇を重ねる所だった。

あまりの衝撃に身体を動かす事も出来ず、その場に立ち尽くしてただ呆然とその光景を見ていた。



わかっていたことだ。




千茉莉の周囲には同じ年頃の男がいることも

その誰かが千茉莉を好きになったっておかしくはないことも



だけど・・・




千茉莉の天使の羽は…俺以外の誰かにもやはり見えていたのかもしれないと思うと苦しくて苛立ちが募ってどうしようもなかった。


『千茉莉はファーストキス…まだだもんな。ここは一番好きな人の為に取っておいたほうがいいな。』


自分の言った言葉に後悔している自分がいた。

あの時、あのまま唇を重ねていたら千茉莉は受け入れていただろう。

千茉莉の心に永遠に俺を残す事が出来たはずなのに…。



あぁ。認めないわけにはいかないんだ。


悔しいが…おれはいつのまにか、あの生意気な天使に心を奪われていたんだ。



あの日診療台で眠る千茉莉が呟いた小さな言葉を思い出し胸が痛くなる。



「あたしが響先生を助けるから…」



いつの間にか心に住みついて俺の心を癒し包んでいた千茉莉



…おまえの事が愛しいよ。



今更、こんな気持ちに気付くなんて……








+++ 10月31日 Fin +++
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