【長編】Sweet Dentist
「何ですってぇ。こんなかわいい女子高生を掴まえてなんて事言うのよ」

「おまえ…かわいいって意味知ってんのか?」

「…ケンカ売ってんの?」

「いや。率直な感想と疑問を述べたまでだ」

必死にいつもの調子で合わせてみるけれど、胸が痛くて涙が溢れてしまいそうだった。

苦しくてこみ上げてくるものを見られない様に、拗ねたふりをして顔を背けそっぽを向く。

だめ…涙なんて見せたら変に思われるじゃない。

「もぉ、本当にむかつくんだから。…でもなんで、女性は診ないの?」

あたしの問いに先生は心底うんざりしたように眉間に皺を寄せて吐き捨てるように言った。

「うざいんだよ。治療した後に誘われたり、顔目当てで俺を指名したり…俺はホストじゃねぇんだ。俺の容姿ばかりが目的で腕を認めないような患者は俺は診たくないんだ」



響先生の声に心が鷲掴みにされるような心の痛みを感じた。


響先生は傷ついているんだ。

顔が綺麗だという事で自分を認めてもらえない事に…。

でも、あたしにはまだ、他にも何か深い傷があるんじゃないかと心を揺さぶる何かを感じていた。

先生の傷を探り癒すべくあたしは心の手を差し出す。


先生、お願い…。


心の傷をみせて。


あたしが癒してあげるから…。


あなたには優しく笑っていて欲しいの。

意地悪で口が悪くて冷たく見えるけれど

本当はとっても優しい人だって知っているから。




あたしはふわりと微笑むと先生の首に抱きついた。



< 71 / 550 >

この作品をシェア

pagetop