【長編】Sweet Dentist
「先生、ありがとうございました。本当に響先生に会えてよかった」

千茉莉が俺に頭を下げるとドアに向かって歩き出す。

その後姿を引き止めたくて…。

このままおしまいにしたくなくて…。

無意識に千茉莉に声をかけていた。


「千茉莉…明日学校が終わったら気晴らしに行かないか?明日は俺も午後から休みだし、オジサンでよかったらご褒美に何処かへ連れて行ってやるぜ?大人のデートを教えてやるよ」


千茉莉が驚いた顔で俺を振り返る。

「おまえなんだか気分が滅入っているみたいだしな。行きたい所があったら言えよ。連れて行ってやるよ」

「いいの?うれしい。ありがとう先生、楽しみにしているね」

そう言って嬉しそうに笑う千茉莉。


途端に白い羽が舞い飛ぶ幻影が俺を包み込む。


あぁ、この笑顔だ…俺の心をとらえて離さない天使の微笑み


この笑みを護るのがどうして俺ではなかったんだろう。






+++ 11月 1日 Fin +++

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