【長編】Sweet Dentist
一瞬ビリッと辺りの空気が張り詰めて痛いくらいの静寂があたしの胸に突き刺さってくる。


どの位時間が経ったんだろう。

ほんの1分ほどだったのか

それとも10分のことだったのか

時間の感覚なんてわからなかった



痛いくらいの冷たい空気




先生の触れた肩だけが熱を持ったように異様に熱くて

あたしの心臓の音がこの静寂の中に響いているんじゃないかと思うくらいにドキドキしていた。



宙…ごめん。




あたしやっぱり響先生がこんなにも好きで…


たとえ届かない想いでも、簡単に忘れる事なんて出来ない。


宙の想いに応える事は、宙の真剣な気持ちも、自分の恋心も裏切る事になると思う。



先生がもう一度肩を抱く手に力を入れたのを感じる。




まるで『行くな。』と言われているようで…



胸が痛いけれど



それでもうれしかった。





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