【長編】Sweet Dentist
「なっ、何で分かるんですか?」


「んなもん、千茉莉の怖がり方見てりゃ誰だってわかるさ。お前もそんなに歯医者が怖いんなら虫歯にならないように努力しろよ。」

「してますよ。歯磨きだって毎食後してるし、フロスもしてるしフッ素コーティング入りの歯磨き粉とかも使って結構気をつかってるんです。でも、虫歯になっちゃうんだもの。」

「ふ~~ん。おまえ、甘いもん食いすぎじゃないのか?」

ギク!

「そっ、それは…しょうがないじゃないですか。もうすぐ大会があるんだもの。新作のお菓子試食しないわけにいかないでしょう?」

「大会?」

「はい、全日本パティシェ選手権大会って言って3年に1度の大きな大会なんです。高校生の部からも1名大賞に選ばれたらフランスに留学ができるんですよ。
あたし、パティシェになって、家業の洋菓子店を継ぎたいの。家には男の子はいないし、あたししか両親の夢をかなえてあげられないの。」

「両親の夢?」

この人にこんな話をしたら笑われちゃうのかな?でも、あたしに夢を語らせたらもう止まらないよ。

「うん、両親とあたしの夢。この世に一つしかない、誰にもまねできないお菓子を作る事。」

先生の顔を真っ直ぐに見てニッコリと答える。今日始めて先生の前で笑ったかもしれない。

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