初恋~俺が幸せにしてみせる~
『こんばんは』

最初に口を開いたのは
彼女の方だった

花屋で会う時とは
まるで別人だった

少し濃いめの化粧

キツい香水

下ろして巻いた長い髪

フリフリしたドレス

ヒールの高い靴

何もかもが違った

それでも気付いたのは
優しい瞳のせい

少し潤んだ綺麗な瞳

何を話たらいいのか
わからないでいた

ゆっくりと俺に
水割りを作ってくれた

タバコを吸うのも
忘れていた

彼女が俺のタバコを
指さすまで、すっかり
忘れていた

それから一吹きだけして灰皿に押し当てた

水割りは少し濃かった

『私もいただきます』

微笑んだ彼女

間違いなく花屋で会う
彼女だった

何でこんな所で
働いてるんだ?

何だよ、その微笑み

何が言いたい?

水割りがきいてくる

先輩をヨイショする事も忘れていた

別の女の子とカラオケを歌い始めた先輩

俺は盛り上げる事も
忘れていた

それでも先輩は
気にしてない様子だった
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