初恋～俺が幸せにしてみせる～

それは突然だった

当直明けで家に戻ると
家の前にスーツ姿の男

『藤田さん？』

声をかけられて
素直に『はい』と答えた

男は２人居た

部屋にあげるわけにも
いかずに近所の
喫茶店へ行く

俺の頭の中は
パニックだった

こいつらは何だ？

俺が何をした？

全く検討がつかない

コーヒーを３つ注文した

運ばれてくるコーヒー

カチャカチャと
食器の音がする

その間、俺とその男は
口を開かなかった

コーヒーに口をつけ
ふーっと息を吐いた

『女と一緒に
借金返してますよね？』

男は唐突に切り出した

『えぇ。はい。
少しだけ』

しどろもどろに
俺は答えていた

何をしたいんだ？

何を言いたいんだ？

全く理解出来ない

男がタバコに火をつけ
カチンとジッポの
蓋を閉めた

煙を俺に向かって
吐いた後に
想像もしない
言葉を吐いた

『女が逃げた』

俺はまばたきさえも
忘れていた

返す言葉も探せない

少し震えた手で
コーヒーカップを
持って、口に運んだ

苦い苦い味がした