初恋~俺が幸せにしてみせる~
こんな状態で一生いる
つもりではなかった

今はそれでいいと
思えていただけだった

千穂、愛してるよ

何度、心で唱えただろう

弱い俺を、千穂は
どう思ってるのか

いつも不安だけが
俺の胸を突き刺す






今日は千穂が病院に
来る事になっていた

最後の検査の日だった

子供を流産してしまって肉体的にも精神的にも
ダメージを受けていた
千穂は何度か婦人科に
通っていた

『明日病院行くから。
たぶん最後になるよ。
私はもう大丈夫』

明るい声で電話口の
千穂はそう言っていた

それなのに、俺の前に
現れた千穂の顔は
冴えない表情だった

心なしか、青ざめて
いるようにも見えた

俺はコーヒーを入れて
千穂に差し出した

診察前に俺の所に
来たはずだから
検査結果が悪かったとは思えない

何かあったんじゃないか

俺は心配になる

千穂は冴えない笑顔で
俺に背を向けて
部屋を出ていった

絶対何かあったんだ…

胸騒ぎがする

それでも、俺は仕事に
戻らなければならない

収まらない胸騒ぎを
抱えたまま、診察室へ
戻っていた
< 202 / 324 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop