初恋~俺が幸せにしてみせる~
千穂が自分の車に近付き車のキーが開いて
ウインカーが光った
その瞬間だった

隣の車から、男が
降りてきて、千穂の前に立ちはだかった

あの男…

見た事がある…

遠い記憶を探ってみる

どこで見たのか

コンビニ?

ファミレス?

病院か?

あっ!

千穂とエレベーターの
前で話していた男だ

…と言う事は…

千穂が泣きながら
話してくれた事が
蘇ってくる

千穂の離れられない男

いや、離れられなかったと俺の中では過去の
出来事として、すぐに
忘れてしまいたかった男

千穂を苦しめた男だ

何で今頃、千穂の前に
現れたんだよ

千穂の車だとわかって
隣に停めてたのか?

全て計画済みなのか?

男は千穂に何かを渡し
すぐに車に戻った

何が起きたのか、俺にはさっぱり理解出来ずに
ただその光景を
見つめる事しか
出来なかった

男の車が走り去り
少ししてから、千穂の
車も動き出した

俺は体が硬直したかの
ように動けなかった

タバコがゆっくりと
灰になっていくだけ

タバコに口をつける事も忘れてしまっていた

目の前で起きた光景が
現実である事が
受け入れられなかった
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