初恋~俺が幸せにしてみせる~
…コトン…

手からボールペンが
滑り落ちていった

仕事をこなすのが
とても苦痛に思えた

駐車場の光景が
脳裏から離れない

千穂の車が走り去り
だいぶ短くなった
タバコを灰皿に押し付け喫煙室の重い扉を開け
半分放心状態のまま
何とか自分が居るべき
場所へと戻ってきた

カルテの整理と回診

俺の仕事はまだ山ほど
残っているというのに

あれは間違いだった

あんなの見間違い

何度も自分に言い聞かす

でも現実は襲ってくる

胸騒ぎはこれだったのか

胸騒ぎにも程があるだろ

さすがにキツい

何を話していたんだろう

何を渡していたんだろう

考えたくないと思えば
その事だけで頭が
一杯になってしまう

気付くと、胃の調子が
悪くなるほど
コーヒーを飲んでいた

ようやく仕事を済ませ
引き継ぎも終わらせた

今日は眠れないと
わかっていた俺は
分厚い医学書を
バックに入れて
病院を出ていた

携帯をチェックしても
千穂からの連絡は
一切ないままだった
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