初恋~俺が幸せにしてみせる~
いつの間にか俺も
30を越えていたんだな

ずいぶんオヤジに
なってきていた

そして、いつまで
経っても、千穂には
真実を聞く事さえ
出来ないまま、時間が
過ぎていくだけだった

医者としての地位は
確実にステップアップ
していても、人間として成長出来ていない自分

今俺の目の前には
見合い写真がある

実家の近所の世話好きなおばちゃんが、是非に
と俺の為に持ってきて
くれたらしいが

ここで結婚するのが
一番いいのだろうか

潮時ってやつなのかな

いい加減嫁でも
もらって、家庭を持って実家を安心させれば
それで丸く納まるのか

憂鬱な気持ちのまま
勢いに押されて
俺は見合い相手と
会う事を約束させられた

確かに写真を見る限り
綺麗などこかの
お嬢さんタイプの
女性だった

千穂とは似ても
似つかないような

千穂と比べちゃ
いけない事くらい
わかっているはずなのに

クリーニングから
仕上がったばかりの
スーツを身に着けて
思い腰を上げて
立ち上がった
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