初恋~俺が幸せにしてみせる~
『出ようか』

俺は右手に一瞬だけ
力を入れて言った

美晴は頷いて
立ち上がった

店を出て、また俺は
美晴の手を握った

ためらいもなく
拒む事もなく

握られた手は、ほんのり温かくて華奢だった

酔っていたのかと
問われれば、確かに
少し酔っていた

理性に歯止めが
利かなくなっていたから

でもたぶん、酒が
入っていなくても
同じ行動を取っていた

手を繋いで歩きながら
ホテルの並ぶ通りへ
入っていった

美晴が握る手に一瞬
力が入ったように感じた

でも歩みは乱れる事は
なくて、ちゃんと俺に
付いてきていた

俺は立ち止まり、美晴の目を見ていた

『大丈夫?』

『うん』

それだけの会話だった

また手を繋いで歩く

ホテルだけが並ぶ通りはどこを見渡しても
カップルだけが歩き
理性は吹き飛んでいる

ネオンの色によって
俺たちの顔が明るく
染められていく

後戻りは出来ないと
自分に言い聞かせて
ホテルの扉を開けた

俺はこのまま美晴と
一つになり、美晴と
幸せになるんだと
自分の中で決めていた
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