初恋~俺が幸せにしてみせる~
☆★43★☆
複雑な気持ちを抱えて
1週間が経っていた

千穂には連絡を入れる
事さえも出来ないでいた

千穂に話したのかも
俺にはわからないまま

たまたま休みの水曜日

とても天気が良くて
道路沿いのカフェに
寄って、外のテラスで
コーヒーを飲んでいた

こんなゆっくりな時間は久しぶりだったななんて考えていた

タバコに火をつけて
ゆっくりと煙を吐いて
空を見上げた瞬間だった

『藤田先生』

ふいに声をかけられた

振り向くと、そこには
北川さんが立っていた

『ちょっと通りかかって見かけたので、つい
寄ってしまいました』

『そうですか。今は
お一人ですか?』

『ええ。湯川は車で
待たせてありますよ。
ここ、いいですか?』

そう言って俺の向かいの席を指差していた

『ええ、どうぞ』

北川さんはコーヒーを
注文して椅子に座った

『待ち合わせですか?』

『いえ。休みなので
1人でブラブラと』

『そうですか。休みに
私に会うのは、ちょっと嫌な気分になりますね』

『そんな事ないですよ』

俺はまたタバコに手を
伸ばして、躊躇った

『構いませんよ』

そう言って北川さんも
タバコを手に取った

『辞める気はないです。最後に自分の楽しみ
取られたら、それこそ
死んじゃいますよ』

北川さんは笑って言った

そのタバコが千穂と
同じタバコだった事を
俺は見逃さなかった
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