初恋~俺が幸せにしてみせる~
千穂はいつものように
俺を迎えてくれた

その笑顔は変わらなくて俺を安心させてくれた

今から泣き顔になる
その笑顔を見ていると
とても切ない気持ちが
俺を襲ってきていた

俺にはそれが怖くて
一瞬躊躇いを伴った

それでも深呼吸をして
キッチンに立つ千穂の
背中に向かって話した

『あの人が病院に
来たんだよ』

案の定、千穂は冷静に
気付かないフリをした

『千穂の昔の男。前に
病院で色々あったろ?』

それでも千穂は
平常心を失わなかった

『馨さんの事だね。
何しに病院に?』

千穂の口から馨という
名前が出て、それを
聞いて、なぜか安心した

多少の動揺を見せるかと思っていたのに
千穂はとても冷静だった

まだ事実は知らない
はずなのに、俺の口からあの人の事に関して
話す事に対して、まるで抵抗をする事はない

千穂と北川さんの関係が俺の勘違いであって
欲しいと、少しだけ
期待をしていたのだが
その結果は肯定されたと俺は感じ取っていた

俺はまだキッチンに
立っていた千穂に
真実を話し始めた
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