初恋~俺が幸せにしてみせる~
当直の夜、すでに
消灯の時間は過ぎていた

俺は北川さんの部屋に
呼び出されていた

北川さんはベッドの上で上半身を起こしていた

『ここに来る前に
最後の一吹きとして
タバコを吸っていて
思い出した事があって』

北川さんはゆっくりと
話し始めていた

『千穂にタバコを
教えたのは私なんです。なぜか急に思い出して
懐かしくなりました』

やっぱりそうだった

千穂にタバコを
教えたのは北川さんだ

『千穂は北川さんと同じタバコを今でも吸って
いるんですよ。きっと
吸うたびに北川さんを
思い出しています』

『タバコなんてもの
教えなきゃ良かった』

北川さんは笑った

『先生と千穂が知り合いだったなんて、驚いた』

『私の方も驚きました。こんな運命もあるのかとかなり戸惑いましたよ』

北川さんは軽く笑った

『だから先生は必死に
大切な人に話さないのかと言っていたんですね』

『そうです。私は
遺される千穂の気持ちを考えて欲しかったので』

『先生は千穂の事を
愛していますか?』

あまりにもストレートに聞いてこられて
少し戸惑ってしまう

どう答えればいいのか

少し答えにくい気もする

『千穂から全部聞いて
お互いに初恋の相手
だった事も聞きました。私が千穂を傷付けて
しまっていた時にも
先生が支えてくれたと
千穂が言ってました』

『千穂は全部話した
みたいですね。私は
今でも千穂を心の底から愛しています』
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