初恋～俺が幸せにしてみせる～

俺の言葉に北川さんは
微笑みを浮かべていた

『良かった。私が
居なくなっても千穂が
寂しい思いをしなくて
済むような気がする』

『千穂の中には
北川さんしか居ない。
私はそこには入って
いけないんですよ。
ずっとそうだった。
どんなに千穂を
追いかけても、千穂は
離れていってしまった』

『それなのに、私は
千穂を幸せにしてやる
事が出来なかった』

北川さんは、俺の
言葉を遮って言った

そして一筋の涙を流した

『いえ。千穂はとても
幸せそうに見えました』

北川さんは驚いたように俺に顔を向けていた

俺は続けた

『北川さんとの関係が
戻った時の千穂は
本当に幸せそうに
俺に笑顔を見せていて
俺は…俺は…俺は…
本当に悔しかった』

負けを認めた気分だった

北川さんには勝てない

千穂の中にはずっと
北川さんしか居ないから

俺の居る場所なんて
なかったんだから

これほど悔しい思いを
するとは思わなかった

こんな気持ちになって
しまうなんて

北川さんの目はなぜか
優しくて、まるで父親に慰められているような
感じがしていた