初恋~俺が幸せにしてみせる~
『私が居なくなったら
必ず先生が千穂を幸せにしてあげて下さい。
必ずですよ。今ここで
私の前で幸せにすると
約束して下さい』

北川さんは強い眼差しで俺を見つめていた

『わかりました。私が
必ず千穂を幸せにして
一緒に生きていきます。北川さんが千穂と一緒に生きられなかった分を
責任持って私が一生を
捧げて一緒に生きます』

『もう思い残す事は
この世にはありません。千穂の事だけが気がかりだったから、もうこれでいつ死んでも構わない』

『千穂にはちゃんと
さよならを伝える事が
出来たんですよね?』

『ええ。とても有意義な時間を過ごしました。
こうして先生と話して
わかり合えて、もう
私が最後にやる事は
全部終わりました』

爽やかな顔をして
全てが終わったと
ホッとしたような顔で
俺に緩やかな表情をした

『怖くはないですか?』

俺の質問には何の
躊躇いもなく

『私がやりたい事は
今日で全部やれたので
もう死ぬ事は怖いとは
思わなくなりました。
今はただお迎えを
静かに待つだけです』

と答えた

俺はすごい人なんだと
確信していた

本当に千穂を愛して
いたんだと確信した

死を恐れてはいない

それは俺が千穂を幸せにすると誓ったから

愛する人を俺に託して
死にゆく北川さんは
病気とも思わせない
爽やかな顔をしていた
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