初恋~俺が幸せにしてみせる~
千穂をタクシーに乗せて見送った後に1人で
喫煙室でタバコを吸った

病院ではあまりタバコを吸う事はないのだけれどなぜか喫煙室に足が
向いてしまっていた

北川さんも最後に
タバコを吸いたかった
だろうなと考えながら
ゆっくりと吸っていた

千穂と北川さんの再会をこの場所から見ていた
あの時を思い出していた

長かったようで短い
今日までの2人を俺は
ずっと見つめてきた

千穂を愛している
気持ちだけがずっと
俺を支えてくれていた

いつ消えるかもしれない千穂が愛する人の命

その命の最後は、俺が
受け止めなければ
いけないんだと思った





医局に戻り、いつもの
仕事に没頭していた

何も変わらない
いつもと同じ日々だ

北川さんの部屋を覗くと北川さんは眠っていた

湯川さんの話では
千穂が帰ってからずっと眠っているという

北川さんの隣にある
モニタは一定のリズムを刻んでいた

『また後で来ます』

部屋を出ると、なぜか
ため息が出そうになった

そして、廊下の向こうに奥さんと子供の姿が
俺の目に入った

奥さんと手を繋いで
歩いている子供は
奥さんに似ていた

笑顔で廊下を歩く
何も知らない子供の姿はとても無邪気に見えて
悲しくなった
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