初恋~俺が幸せにしてみせる~
『社長の最後の笑顔を
見たのは、奥様ではなくあの人だった事が
運命だったんですね』

湯川さんが呟いた

『私はそう思います。
強く惹かれ合った2人の愛の結末だったのだと
私は言い切れます』

湯川さんは真っ直ぐ
強い眼差しで俺を見た

『先生は、あの人を
愛しているのですか?』

『え?』

『何となく、勘です』

『想像にお任せします。湯川さんもこれから先
大切にしなきゃいけない人が居るでしょう。
北川さんが居なくなって私たちには守らなければいけないものが出来た
というわけですよ』

『いや、その…』

湯川さんはその後の
言葉に悩んでいた

『いいんです、それで』

俺は言い切った

湯川さんは俺の言葉を
ちゃんと理解したらしく優しい笑顔を見せた

『すっかりお仕事の
邪魔をしてしまって
すみませんでした。
その手紙、託します』

『確実に届けます。
ありがとうございます』

湯川さんは軽く頭を
下げてから立ち去った

俺は手紙を握り締めて
その背中を見送った

北川さんが居なくなり
遺された人々だけが
前へ進んでいく

きっと北川さんが眠る
その場所だけは特別で
未来を示してくれる
場所になるだろうと思う

千穂にとっては特別な
場所になるばずだった

きっと一生…
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