初恋~俺が幸せにしてみせる~
☆★47★☆
北川さんが居なくても
俺と千穂には季節が
巡ってくる

時間は誰にでも平等に
訪れてくる

北川さんと俺たちの
間の時間だけはそのまま

そこだけは止まって
いるように思えた

千穂は北川さんの
墓前へはまだ行ってない

時間だけが過ぎていく

世の中から北川さんの
影は全くなくなっていた

マスコミも騒がない

会社の名前は時々
聞く事はあったけれど
今の俺達には関係ない

全くの別世界の話だった

北川さんの奥さんが
どう過ごしていようと
湯川さんが今はどんな
地位にいても、それは
どうでもいい事だった

季節は春を迎えていた

暖かい風が俺と千穂を
包み込んでいる毎日

ピンク色になった蕾が
開き始めて、桜の花が
綺麗に咲き乱れる季節だ

俺は千穂の部屋で
窓の外の満開の桜を
眺めていた

なぜだろう

ふと思った

北川さんに会いに
行くのは今かもしれない

千穂を幸せにするのは
俺なんだと、北川さんに報告がしたかった

『墓参りに行こうか』

恐る恐るその言葉を
口にしていた

コーヒーを煎れて
千穂に渡そうとする
俺の手に緊張が走った

『桜の花を墓前に
持って行く』

千穂も行く気になって
くれていたんだ

タイミングが一緒だった

これは奇跡に近いと
勝手に思った

千穂はとても綺麗な
桜色のワンピースに
着替えていた

北川さんに気付いて
もらいたいんだろう

大丈夫だよ

ちゃんと見ていて
くれてるはずだから

会いに行こう、今すぐに

北川さんの眠る場所へ
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