初恋~俺が幸せにしてみせる~
千穂は墓前に桜の花を
持ってきて、手向けた

墓には似合わない桜

ほんのりピンクがかった花びらが開いている

覚えてるよ

千穂は昔から桜の花が
好きだった事を

絵を書いた時の背景は
いつも桜の花だった

これも運命だろうか

北川さんは、桜の花を
見たがっていた

桜の花が咲くまでに
自分が生きられない事を知っていたからだろうか

そしてその花を千穂は
愛していた

これから先は俺が
千穂に毎年桜の花を
見せてやるんだ

もちろん北川さんを
忘れてしまわない為に

北川さんへの思いを
桜の花びらと一緒に
風に乗せて届けたい

これから先もずっと

墓前には桜の花とタバコ

そして俺たちは様々な
思いを胸に手を合わせた

俺の方が先に顔を上げ
隣で手を合わせる千穂をジッと見つめていた

千穂が手を離した瞬間
俺は千穂の手を握った

驚いて俺を見つめる千穂

『俺、ちゃんと千穂を
幸せにします!
ここで誓います!
ちゃんと見ていて
下さい!』

言えた…

ちゃんと北川さんに
千穂を幸せにすると
言う事が出来た

千穂は驚いたのか
何も言わなかった

それでも俺の手を
ギュッと握り返していた

それだけで伝わる

千穂の優しい気持ち

千穂が前に進もうと
している気持ち
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