初恋~俺が幸せにしてみせる~
それから俺たちは
しばらくそこに座って
遠くの景色を見ながら
話をしていた

時々優しく吹く風が
北川さんの存在の
ような気がしていた

千穂のワンピースの裾が時々揺れていた

雲一つない青空は
全ての気持ちを一気に
吸収してくれていた

千穂は時々思いに
ふけるように黙り込む

千穂の手を握ったまま
口数も少なかったけど
傍に北川さんが居る
ような感覚を感じていた

千穂は俺の言葉を
どう受け止めたのだろう

俺じゃ不安だろうか

俺じゃダメなのか

でも握り返してくれた
手の温もりは伝わった

ギュッと力を込めた
その手の温もりは
俺への返事とは違うのか

そう受け取っては
いけないサインだろうか

だけど、帰りの車の中の千穂の表情は明るかった

桜の花を見つめる
千穂の表情は優しかった

向かう時とは全然違う

何か心に変化があった
のは間違いないようだ

千穂を部屋に送り届けて俺はそのまま帰った

千穂が北川さんへの
想いを整理出来るように

俺はそこに居ては
いけないんだと思った

もちろん俺にも気持ちを整理する時間が欲しい

千穂を幸せにする為に
この先どうすればいいか

俺のするべき事は
何なのかを求めた

明確な千穂の返事が
ない事だけが不安だった
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