初恋~俺が幸せにしてみせる~
千穂を誘った時に
レストランの名前を
伝えると千穂は少し
驚いた反応をしていた

そのせいか、千穂は
いつもよりも少しだけ
お洒落をして、綺麗めの姿で俺の前に現れた

俺も少し高かった
スーツを着て、新しい
靴を履いていた

朝から心臓ははちきれてしまいそうなくらい
ドキドキしていた

自分を情けないと思う

もっと度胸のある男で
居なきゃいけないのに

レストランではピアノの生演奏が流れていた

雰囲気は準備万端

俺の心だけの問題

頑張れ自分

ここしかないんだぞ

自分を励ましている

料理が出てきても
その味さえ、わからない

せっかくの料理なのに

俺は会社での面白い話や友達との笑い話だけを
次々に話していた

千穂は俺の話に聞き入り笑顔を向けてくれた

千穂の会社の上司の話やこの前買い物に行った
ショップ店員の話に
俺も笑っていた

どのタイミングにしよう

いつがいいんだろう

どんどん手が汗ばむ

『千穂』

『ん?』

せっかく言い出そうと
思ったタイミングで
料理が運び込まれる

スーツの内ポケットに
手を入れようとして
躊躇ってしまった

何度繰り返しただろう

俺は情けない男だ

こうして何度も
タイミングを無くし
最低なパターンに
なってしまった

そのまま消えて
無くなってしまいたい
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