初恋~俺が幸せにしてみせる~
自分の不甲斐なさに
嫌気がさしてくる

やっぱり俺はダメな
男だったんだな

こんな俺なんかに
千穂を幸せにする
事なんて出来るはずない

指輪も無駄になる

情けなすぎるよ、俺

30過ぎて、まともに
プロポーズも出来ない

タクシーに向かって
小走りで乗り込んだ

あとは千穂を部屋まで
送り届けて帰ろう

もう千穂に合わせる
顔もないくらいだ

気分は落ち込んでいた

そんな俺を救ったのは
やはり千穂だった

『飲みなおそうよ!』

明るい声が俺を救う

俺は千穂に誘われるまま千穂の部屋にあがった

もう一度だけ、ここで
チャレンジしよう

そう思わせてくれた

最後のチャンスかも
しれないと思った

ワインの入ったグラスを合わせて、微笑み合った

もう今しかない

北川さんが何度も
チャンスをくれていて
これが最後なんだと
言われたような気がした

それと、千穂の笑顔が
俺の背中を押してくれた

もう戸惑いはない

カッコ悪いのは今この
時点でカッコ悪いから
もうどうにも出来ない

カッコ悪い俺を
どうにか受け止めてくれ

そう願ながらポケット
から指輪を出していた
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