初恋~俺が幸せにしてみせる~
千穂は不思議そうな顔で俺を見つめていた

俺はゆっくりと指輪の
ケースを差し出した

千穂に情けない男だと
思われても仕方ない

『本当はかっこつけて
レストランで渡そうかと思ったんだけど
緊張してさ…。
格好悪くてごめん』

千穂は指輪のケースを
ただ見つめるだけだった

少しだけ沈黙が流れる

こんなにカッコ悪い俺にこんな物を渡されても
納得出来ないだろうな

千穂だって戸惑って
いるに違いない

カッコ悪い姿をこんなにさらけ出しておきながら俺は緊張で震えていた

『開けてみて』

俺の言葉に、千穂は
俺の顔を見つめていた

俺はゆっくり頷いた

テーブルの下から
出した千穂の手は
少しだけ震えていた

細くて白い腕が
指輪のケースに伸びる

パカッとケースを
開けた千穂の瞳に
ダイヤが反射して
瞳がキラキラして見えた

『大介…』

そう言って千穂は顔を
あげて、俺を見ていた

俺はただ緊張と
恥ずかしさだけだった

まともに千穂の瞳を
見る事も出来なかった
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