【短編】Kiss Me…
「こんな所で何冗談言い出すんだよ。僕をからかってる?」

サラリと笑いながら言い放たれる心が砕けるような英輝の言葉。

あたしの真剣な想いも英輝には冗談にしか映らないなんて…。

あたしの中で何かが壊れた。

やっぱりあたしは英輝にとって男友達と何も変わらないのね。


「……もう…会わない。」

血を吐くような苦しみを言葉にするというのはこう言うことなんだろう。
声に出しているつもりなのに、喉が詰まって上手く音にならなくて、やっと出てきたのは搾り出すような低い擦れた声だった。

「え?何か言った?」

優しく微笑んであたしを振り返る英輝。
そのとき、一瞬英輝と瞳が絡んだ。

英輝と視線を交えたのはどのくらいぶりだっただろう。
眉を潜めてあたしから視線をそらす英輝。それでも一瞬視線を絡めるようにあたしを見つめてくれた事がうれしかった。
ずっとこうしてあたしを見て欲しかったのに…。
ようやく決心した瞬間にあたしを見るなんて英輝はずるいよ。

胸の奥が熱くなり涙が込み上げてくるのを必死に堪えて、今度は擦れた声ではなくハッキリと言った。


「あたし…もう、英輝とは会わない。」

決して涙を見せるもんかと心を叱咤して英輝を見つめる。

お願い。英輝、最後にあたしを真っ直ぐに見てよ。



最後に伝えたいの…。




あなたを好きだったって…。

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