隣で。
ぴりぴりとした空気の中,それをぶち壊す奴がやって来た。

「ただいま-今日メシ何?」

バカ兄ちゃん!今夕飯の話するなよ-!!涙

「ハヤシライスよ。まだ全然出来てないけどね」

お姉ちゃんの冷たい目線があたしへと向けられる。

「親父帰ってくる前に出来なくね?何でもっと早くやっとかなかったんだよ」

隣に来た兄ちゃんの足を思いっきり蹴った。

その一撃はスネに直撃しかなりのダメ-ジを受けたらしく,兄ちゃんは声も出せずにあたしを見た。

その顔はまるでムンクの叫びのような悲惨な顔だった。

「浩太!あんた昨日の風呂掃除さぼったでしょ!?」

兄ちゃんはバレたか-的な顔をして,こくっと頷いた。

「さぼった罰として,来月も風呂掃除当番ね」

「え-2ヶ月も?」

「…何。文句ある?」

「な,何でもないです…」

やっぱりこの家の支配者はお姉ちゃんだな。苦笑

兄ちゃんは渋々と二階へと上がっていった。

「真帆も!今度さぼったら風呂掃除当番,浩太と変わってもらうからね」

「さ…さぼりません!!」

それから沈黙の中で二人は作業を続けた甲斐があり,お父さんが帰って来る前にはなんとか出来た。



「いただきます」

我が家のしきたりでは,家族が全員揃わなければ夕飯は食べれない。

だからどんなにお腹がへってもひたすら待つしかないのだ。

これは昔お母さんがらしく,

「「一人で食べるご飯はおいしくないでしょ?だから全員で食べましょう」」

この一言から始まったらしい。

多分,働きに出てるお父さんを想って言ったのだろう。

ほんと優しいんだな~,お母さんは。

それに比べてお姉ちゃんは…

ちらっとお姉ちゃんを見ると,サラダを盛っている最中で,目が合ってしまった。







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