隣で。
「柏原くん,おはよう」

「あ,おはよっす…」

ったく。あたしと遥への態度,全然違うじゃん。

あたし達三人はいつも一緒だった。

いわゆる¨幼なじみ¨ってやつ。

だから啓介を 男 なんて思った事なんて一度も無い。



……その時は,そう思っていた。

その考えが覆されるなんて…考えてもいなかった。









「は-るかっ!帰ろ-♪」

「うん。あ,ちょっと教務室行ってくるから教室で待ってて」

「分かったあ」

教室から出て行く人達を掻き分けて,遥が小走りで教室を出て行く。

その後姿を数人の男子が振り返っている。

さすが遥だな…

昔からモテてて,遥に集まってくる男子はあたしが蹴散らしてた。

それに比べてあたしは…。

今まで彼氏なんていた事ないし,恋した事も告白した事もされた事もない。

「恋,したいなあ」

机の上に座って独り言をつぶやく。

喧嘩が強くて,運動神経バツグンで,勉強はまあまあで,髪はセミロング。

自分のいい所なんてこれぐらいか。

悪い所と言えば…身長は,高2なのに160㌢…。

こんなあたしを誰が好きになるかっつ-の。

―コツ…コツ…―

廊下から,誰かが歩いてくる音がする。

気付けば教室にはあたし一人…。なんか,恐くなってきた…!

ゆ…幽霊だったらどうしよう!!?

―コツ…コツ…―

どんどん音が近づいてくるっ!!

そして音が止まった。

ガラッ…

教室の戸がゆっくりと開いてゆく…。







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