女子高生はオオカミ男。
「ちょっと、どこ行くのよ!」

何度言ったか数え切れないほど問いかけた言葉。

やはり狼は答えない。

無言で私の腕を引っ張る狼。

その力強さにああ、狼って男なんだなと当たり前のことを考える。

華奢な体つきだからうっかりそのことを失念してしまうのだ。

あっ、でもこいつ会った初日にキスしてくるほどの危険人物じゃん!

何、今回は自分に雑用を押し付けた復讐か?

それはそれである意味怖い…………。

恐ろしさに背筋を震わせていると、

「着いたぞ」

いきなり立ち止まりやがった。

長身の狼の背中に鼻頭をぶつける。

鼻が低くなったらどうしてくれんのよ、あんた!

あまりの痛さに涙ぐんでいると、またいきなり腕を掴まれ引き寄せられる。

腕が千切れるってば。

強引な狼に辟易していると薬品のにおいが鼻をついた。

「……保健室?」

「の他に何がある」

ああ、そうですね。

内心で愚痴っている私を置いて狼はスタスタとベットの隅に腰掛ける。

まさか、貞操の危機!?

保健の先生はどうした!

そんな心の声が聞こえたのか、狼はまたくつり、と笑った。

こいつ……使い分けてるな。

皆がいるときはくすり、とはかなげな微笑み。

二人っきりのときはニヤリ、の不敵な笑み。

そしてたまにくつり、と優しく微笑するのだ。

「別に襲うとかそんなこと考えてねぇよ」

「じゃあ何で保健の先生……」

「男子部と女子部を行き来してるからな、いるのは2分の1の確率だ」

一人しかいないのかよ!

もう一人用意しろよ、この学園!

何考えてんだ上層部!!

校長理事長生徒会の皆様方を口汚く罵倒していると、狼はまた口を開いた。

「で?何を知りたいわけ?」









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