女子高生はオオカミ男。
「まったく、先生もこんな雑用押し付けて」

資料室が見えてきてからもぐちぐちと笹岡先生の呪詛を呟いている私に凪が苦笑する。

「まあ、しょうがないだろ。放課後に一人で残ってるほうが悪い」

「だって友達いないし。寮は独りだよ?」

「あっちゃー」

基本、寮は一室で二人。

でも私のクラスは奇数人だから、ちょうど高校からの私が余ってしまったというわけ。

あーあ。

「笑い事じゃないって」

落ち込みながらも談笑していると、いきなり前を行く悠が立ち止まった。

もう資料室の扉は目の前だ。

「? どうしたの?」

問いかける私に悠は青ざめた顔を向ける。

「まずい。凪、まだやってる」

何をやってるのだろう?

ハテナマークを浮かべる私に反し、凪のほうはというと見事に血の気が失せている。

「マジかよ……もう五時だぜ?」

確かに人影はまばらだ。でもそれが資料室と一体何の関係があるの?

「二人とも一体どうしたの?」

我慢できずに聞く私に凪は妙に怖い顔をする。その凄まじい形相に一歩退いたぐらいだ。

「え、何、どうし……」

「いいか、よぅく聞け。まだドアを開けるな。ちょっと待て」

「なんで?」

「なんでもだ!」

納得がいかない私に今度は悠が説き伏せにかかる。

「じゃあ、校内探検しようよ。優貴、こっちに来たばかりでしょ?」

でもそろそろ資料を抱える腕が痛い。

腕の圧迫感に耐えられなくなって、私は二人の制止を振り払って扉を開けた。



 


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