女子高生はオオカミ男。
壁に押し付けられたと理解したのは目の前に『さいってい』な男がアップで映し出されたのと同時だった。

ついで、唇に柔らかい感触。

「ん!?ちょっ……んんっ」

…………ちょっと待て。
 
ねぇ、まさかこれって……
 
キスされてんのっ!?

綺麗な灰色の瞳にとらわれたような感覚。

ふわり、と甘くて爽やかな香りが鼻を掠めた。

時間が一瞬、止まったような錯覚の中、

「優貴!」

悠と凪の声で我に返る。

「やっ、んぅ…………ヤダつってんでしょう!!」

「狼っ!てめぇ、何を……て、え……ろ、う?」

凪の叫びと同時に『さいってい』な男が崩れ落ちる。

後から入ってきた二人には何がなんだか解らないようだ。

「なあ、こいつ、一体どうして……」

這いつくばってる男を訝しげに見やり、尋ねる凪に私は爽やかに微笑みかえした。

というか二人とも、何でこっちを向いて後ずさってるの?

あの先輩らしき女の人はどこへ?

まあ、そんな疑問はおいといて。

「この人一体誰?」

ぜんっぜん知らない人にキスされたんですけど…………。

「あ、この野郎?俺らと同じクラスのさいっていな男。友達になりたくないヤツ、ナンバー1。」

だろうね。

「ついでに小学生からの親友」

「悪友の間違いだろうがっ」

……だろうね。

「『ろう』って言ってたけど…………」

まさか蝋燭の蝋じゃあないだろうな。

白い蝋がどんどん融けていくさまと男を重ね合わせて思いがけず笑みが零れる。

「言っとくけどな、蝋燭の蝋じゃ、ないからな」

いつの間にかは這いつくばっていた男は立ち上がって、こっちをねめつけていた。

「狼って書いて『ろう』だ。……やってくれるじゃねえか、お前」





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