素直になんかなれない


遠くで響く誰かの笑い声を聞きながら、あたしは口を固く閉ざし悠くんの背中を追い掛けた。

都合悪くなると
黙り込むのはあたしの悪い癖。


だけど、昴と一番仲の良い悠くんにあたしの本音を話してもいいのだろうか。

辛くて、あまりに悲しくて
蓋をしてしまった気持ちを、この人に…。




すると、何も言わないあたしを見兼ねて悠くんは言った。



「アイツ、ああやって笑ってっけど、結構堪えてると思うよ。」

「……昴、が?」

「うん。もしかしたら、奈雲よりね。」


…嘘だ、そんなの。
だって教室に居る昴は、別れる前と何も変わらない。

みんなに囲まれて
大口を開けて笑って。



放課後だって
付き合ってる頃は我慢してたサッカーしてる事

あたし、知ってるんだから。




ペタン、ペタンと進む悠くんの足音に耳を澄ませながら

あたしはすぐそこに見える職員室の手前で立ち止まった。



少し先まで歩いた悠くんもあたしに倣い、足を止める。


「…奈雲?どーした?」




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