素直になんかなれない


誰にも言えなかった、心の奥にある本音。


この人なら
わかってくれるだろうか。

少しだけでも
あたしの気持ちを汲み取り、そして理解してくれるかな。



滲んだ視界に
あたしはゆっくりと言葉を吐き出してく。



「……あたしに、昴は勿体ないよ…。」

「…どうして?何でそう思うの?」

「あたし…素直じゃ、ないし…。」


それに、と続けると
言葉が喉に引っ掛かってしまう。


こんな事、悠くんに言ってどうするんだろう。

でも、もしかしたらあたしは
ずっと誰かに、聞いて欲しかったのかもしれない。



この胸を支配していた昴への劣等感を誰かに、認めて欲しかった。



「…それに、昴はあたしの事…それほど、好きじゃなかったんだと思う。」


…だから、もういいの。


そう呟くと、悠くんは
「そっか。」と頭を掻いて言った。



「奈雲が後悔してないならいいと思う。どんな結果であれ、奈雲自身が真剣に考えて出した結論ならさ。」

「………、」

「…後悔、してないんだろ?」

「……して、ないよ。」




…本当に?




< 101 / 135 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop