素直になんかなれない


問い掛けてみても
答えなんてわからなかった。

ましてや、誰かが答えてくれるはずもなくて。



あたしはあの時
昴に伝えた事を、確かに後悔なんてしてない。


それならば
この胸の痛みは何なのか。


そう聞かれたら
きっとあたしは答えられないと思う。

そのくらい、曖昧で
それでいて矛盾してて。



昴の気持ちを聞いたら、少しは気持ちが晴れるんじゃないかとも思ったけど

そんな勇気すらないあたしは、未だ深い深い迷路をさ迷ってる。



ただ、“助けて”と叫びながら。





それを聞いた悠くんは
どこか溜め息混じりにぼそっと口を開いた。


「…アイツは、奈雲の事…、」


でも、悠くんの言葉はそこで途切れた。


「…あ、ごめんね、」

正確には、あたしの携帯が知らせたバイブ音が遮ってしまった、と言った方が正しい。




慌てて
制服のポケットを探ると


――チャリン、

と落ちた自転車の鍵。




その音に
全ての時間が止まった――。





「……奈雲…それ、」





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