素直になんかなれない


今日は3ヶ月に一度の席替え。


神様の仕業か
廊下側の一番前になってしまったあたしに

更に最悪なのは、昴の隣があの美帆だという事だ。



いかにも“ぶりっこ”と呼ぶに相応しい美帆は
カールした髪を二つに結わえ、短いスカートからその肌を惜しげもなく晒し出している。

極めつけは、あの甘ったるい声。



妙にアニメ声で
「昴ぅ~。」って呼ぶ度、あたしのイライラメーターは上昇してゆく。



だけど、嫌なのはそんな理由じゃない。



実は、昴が付き合った時
あたしは美帆に呼び出され、そして言われたのだ。


「あたしずっと昴が好きだったの。」

「……は?」

「なのに、何で奈雲さんな訳?」


ポカン、とするあたしを余所に
目の上にたっぷり乗せられたラメを光らせ、美帆は宣言した。



「あたし、負けないから!」



だからこそ
昴と付き合って4ヵ月弱。

あたしはずっと美帆を警戒して来た。


そのおかげで
あの宣言の割には美帆の攻撃は控えめだったけれど

今回はもうダメな気がする。



相手はあの美帆。

きっと、ここで勝負をかけてくるに違いない。






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