素直になんかなれない
それは、多分
俺がもっとも恐れてる事。
もし、寧々が俺以外の男と…
あぁ、ダメだ。
そんな事、考えたくもない。
俺はそれ以上聞く気にもなれず
「誰に盗られんだよ?」
と、半ばキレ気味に悠を睨む。
すると、悠は余裕の笑みを浮かべ答えた。
「そうだなぁ。例えば、俺…とか?」
「は?」
「そうゆう事も、ありえなくねーだろ。」
ふん、と鼻で笑い
中指と親指で最後の一口を吸った悠は、捨て台詞を吐きタバコを投げた。
「俺なら、お前より幸せにしてやれる。」
その瞬間、俺の中で何かが弾け飛んで。
「…っざけんなっ!!!」
気が付けば
俺は悠の胸倉を掴んでいた。
胸の中に湧き上がる、やり場のない怒り。
そして、声にならない想い。
「お前に、何がわかんだよっ!俺はっ、俺は―――、」
不覚にも
声が震えてしまった。
寧々に
伝えられなかった、俺の気持ちが痛くて。
俺はもう、限界だった。