素直になんかなれない
………………
「っ、はぁっ、」
「…ってぇ、」
それからどのくらい、拳を交わしていたのか。
わからないけれど
感じてるのは、体中を覆う気怠さと、口から滲んだ血の味だけで。
膝を立て
仰向けにベンチに寝転がった俺は、未だ息切れしながらぼやけた視界で星を眺めた。
すぐ斜めには、悠の息遣いとライターを擦る音が聞こえる。
すぐにでも起き上がりたかったのに、どうにもこうにも体が言う事利かなくて、俺はその状態で乱れた学ランのボタンを開けた。
冷たい冬の心地いい風が、俺の体を撫でてゆく。
すると、突然
「お前も吸うか?」
と、頭上から声が降って来て
俺は視線だけをそちらに向けた。
目の前には
傷だらけの顔で、俺を見下ろす悠の姿。
でも、動く事すら出来ない俺なんかよりも、全然しっかりとしていて。
「…いらねーよ、苦ぇもん。」
それが妙に悔しくて
俺は心底ぶっきらぼうに、悠の差し出したタバコから目を背ける。
俺の返事を聞いた悠は
「そうか。」とだけ呟いて、そのままタバコを口に持っていった。