素直になんかなれない


怖い程の静寂。
目が眩むような、体の痛み。


だけど、心は
それ以上にもっと痛かった。




…確かに、悠の言う通りなのかもしれない。

こんなに殴り合ってから気付く俺も相当バカだけど。



俺は多分
寧々から逃げてるんだ。

受け入れてもらえない事に怯えて、この気持ちを伝える術がわからなくて。


寧々の涙を見るのが…辛くて。


これ以上
泣かせる事になるなら、一緒に居ない方がいいんだと思った。


俺と居る事で
寧々が我慢する事になるなら

別れた方がいいのかもしれないって。



あの時
確かにそう、思ったんだ。



でも、寧々を失ってからの俺は魂が抜け落ちたように空っぽで

その隙間を埋める事も出来なくて。


こんなかっこ悪い俺を見せないように、と小さな虚勢を張って
毎日バカみたいに笑って。



言ってしまえば
ただ、強がっていただけだった。


心はもう、今にも折れてしまいそうなのに。



……いや、もしかしたら

寧々にフラれたあの日から、すでに俺の心は折れていたのかもしれない。




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