素直になんかなれない
正直、あんなモノで機嫌がよくなるとは
これっぽっちも思っていなかった。
でも、寧々は喜んでくれたんだよね。
『……何よ、これ。』
ヒヨコを差し出した俺に
寧々は唇を尖らせて尋ねる。
素直に、“寧々の為に取って来た”とは言えなかった俺は
照れ隠しするように
おちゃらけた感じで、ふざけて言ったんだ。
『何か、これ寧々に似てない?』
『似てないしっ!』
ぶう、と膨れる寧々に
俺は思いっきり声をあげて笑った。
そして、次の日から
寧々のカバンにつけられた、俺があげたヒヨコ。
だけどあれは
俺たちが別れた次の日、寧々のカバンから外されていたのを
俺は見逃さなかった。
思い出しても胸が痛む。
「……カバンには、もうついてなかった。」
弱々しく俺がそう呟くと
悠は得意気な顔をして、タバコを消した。
「付いてるよ、まだ。」
「…え?」
「チャリンコの鍵に付いてる。」
――――それって、