素直になんかなれない
「……寧々?」
黙り込んだあたしに
戸惑いがちに、昴が呼び掛ける。
ぐっと拳を握り締め
俯いた先に伸びた、二つの影。
もしかしたら
一ヶ月後…ううん、一週間後。
昴の隣に居るのは
あたしじゃなくて美帆かもしれない。
そう思うと
鼻の奥がツンっとしてきて
あたしは黙ったまま昴を追い越して歩き出した。
「え、ちょっ、寧々っ?」
だけど二、三歩足を進めた所で
見事に昴の手に捕まって。
「っ、離してっ!」
その手を力いっぱい振り払うと
それと同時に零れた涙。
「……寧々…?」
唖然とする昴に、肩で息をするあたし。
…バカみたい。
バカみたいっ!!!
「…昴は、わかってないよ……。」
「え?」
「昴は何もわかってないって言ったのっ!!!」