素直になんかなれない


「……寧々?」

黙り込んだあたしに
戸惑いがちに、昴が呼び掛ける。



ぐっと拳を握り締め
俯いた先に伸びた、二つの影。

もしかしたら
一ヶ月後…ううん、一週間後。


昴の隣に居るのは
あたしじゃなくて美帆かもしれない。



そう思うと
鼻の奥がツンっとしてきて

あたしは黙ったまま昴を追い越して歩き出した。



「え、ちょっ、寧々っ?」

だけど二、三歩足を進めた所で
見事に昴の手に捕まって。



「っ、離してっ!」

その手を力いっぱい振り払うと
それと同時に零れた涙。



「……寧々…?」

唖然とする昴に、肩で息をするあたし。



…バカみたい。

バカみたいっ!!!



「…昴は、わかってないよ……。」

「え?」

「昴は何もわかってないって言ったのっ!!!」







< 14 / 135 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop