素直になんかなれない


そこまで言い切って睨みつけたあたしに
昴は突然難しい顔をして、落とすように言った。



「…わかってないのは寧々じゃない?」

夕暮れが、涙を
昴を、滲ませてく。



「……あたし、が?」

掠れた声でそう呟くと、昴は困った様子で頭を掻いてみせた。


言いにくそうに
だけど、強いその眼差しがあたしの心を揺さぶって。


「俺は、寧々の言う事…出来る限り答えてあげたいって思う。けど、」


短くも長い沈黙が流れてゆく。
遠くの空に、太陽は沈みかけていた。

そして、昴の肩越しに見える学校から
野球部の掛け声が響いた、その時。



「友達も、クラスメートも…もちろん寧々の事も、俺にとっては全部大事なんだよ。」

ぶつかった視線に
あたしはもう、何も言えなくなってしまった。



…それって
あたしは一番じゃないって事?


ねぇ、昴。

昴にとって、あたしはどの位置に居るの?



あたしは
一番じゃなきゃやだ。

昴の、一番じゃなきゃ
こんな関係…意味ないじゃない。



意味、ないんだよ―――。







< 15 / 135 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop