素直になんかなれない
………………
青い空に浮かぶ羊雲に
パーン、っと爽快な音が鳴り響く。
わぁぁと湧いた歓声が
俺の耳元をすり抜けて。
至近距離で走り過ぎた後輩の背中を、色のない目で見つめ返した。
と、その時。
突然肩を組まれ、伸びて来た腕の先へ視線を投げると
「なーに浮かねぇ顔してるんすか、昴くん。」
相変わらず態度のデカイ悠がニヤリ、と笑った。
「……。」
だけど無言の俺。
「アンカーなんですから、テンション上げましょーや。」
「…わかってんよ。」
言ってる側から
はぁ、と溜め息をつくと
『続きましては~クラス対抗リレー…』
呑気な放送が聞こえ、俺の憂鬱は深みを増してゆく。
只今、体育祭真っ最中。
空は清々しい程に澄み渡って
俺の心とは裏腹にグラウンドへ差し込む太陽の光。
例えるなら、そう。
“本日は晴天なり”
…まさに、そんな感じ。