素直になんかなれない


………………



青い空に浮かぶ羊雲に
パーン、っと爽快な音が鳴り響く。


わぁぁと湧いた歓声が
俺の耳元をすり抜けて。

至近距離で走り過ぎた後輩の背中を、色のない目で見つめ返した。




と、その時。



突然肩を組まれ、伸びて来た腕の先へ視線を投げると

「なーに浮かねぇ顔してるんすか、昴くん。」

相変わらず態度のデカイ悠がニヤリ、と笑った。




「……。」

だけど無言の俺。



「アンカーなんですから、テンション上げましょーや。」

「…わかってんよ。」



言ってる側から
はぁ、と溜め息をつくと

『続きましては~クラス対抗リレー…』

呑気な放送が聞こえ、俺の憂鬱は深みを増してゆく。




只今、体育祭真っ最中。


空は清々しい程に澄み渡って
俺の心とは裏腹にグラウンドへ差し込む太陽の光。



例えるなら、そう。


“本日は晴天なり”


…まさに、そんな感じ。






< 31 / 135 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop