素直になんかなれない
「ほれ、行くぞ!」
「……あぁ。」
立ち上がった悠に、俺は重たい腰を上げた。
「昴~、頑張ってーっ!」
「絶対優勝しろよなぁ!」
飛んでくる声援にも、曖昧な笑みで返す。
この心のモヤモヤの原因はわかっていた。
アンカーというプレッシャー。
バトンをちゃんと受け取れるかって不安。
でも、一番の原因は――――。
「相澤くん、」
その呼び声に
俺の足が止まった。
振り返らなくたって
声の主が誰かなんてわかりきってる。
…鼓動が速まり始めて。
俺は少し躊躇いながらも
ゆっくり後ろに体を向けた。
瞬間、目に付いたおだんごに
更に心臓は高鳴る。
「頑張ろうね!」
笑う寧々の笑顔が胸を締め付けて
「……おう、」
そう返すのが、精一杯だった。