素直になんかなれない
寧々は、一体
俺の事をどう思っているんだろう。
俺はバカだし
単純だし、その上鈍いし。
例えば、寧々があの日俺に言った言葉が一種の気紛れで
そこに大して深い意味がないのだとしたら。
もし、そうだとしたら
こんなに膨らんでしまった俺の気持ちはどうすればいいの?
どこに、向かえばいいんだよ…。
こんな風になったのも
全部、寧々のせいじゃんか。
寧々が、あんな事言うからじゃんか。
なのに、何でそんな普通な訳?
「…わっかんねぇ…。」
やっぱ、女ってわかんねーよ。
はぁ、と吐き出した溜め息は行き場を失くし
俺の心のモヤモヤを濃くさせた。
そして、そんな俺の心を置き去りにして
いよいよリレーが始まる。
「第一走者、位置について下さーい!」
ピストルを手に誘導する人の陰に見えるのは、集中した様子の悠の横顔。
その手には
あの、真っ赤なバトン。
一気に緊張が高まってゆく。
そして――――。
「位置について……よーい!」
パーン!と放たれた空砲に
わぁぁぁと地鳴りのような歓声に消えた、悠の背中に俺はぐっと拳を握った。