素直になんかなれない
やっぱり、とでも言うのだろうか
悠は余裕でぶっちぎりで。
後を追って来る他のクラスの奴らに目もくれず
駆け抜けるその姿は、男の俺から見てもかっこよかった。
その分、重く圧し掛かるプレッシャー。
ヨッシーは女ながらも
その一位の座を次の田中に回し
続いて受け取った飯島も、追い付かれそうになったものの見事挽回し
そのまま寧々へとバトンタッチ。
2位との差は
およそ、5メートル。
一気に沸く、俺たちのクラス。
もはや、誰しもが
俺たちの勝利を確信していたと思う。
…だけど――――。
ちょうどカーブに差し掛かった、その時。
地面へ吸い込まれるように
転んだ寧々に、クラスみんなの動きが止まった。
コロコロと地面で回転するバトン。
「っ、奈雲っ!!!」
思わず叫んだ俺の声は
虚しく他のクラスの歓声に消されてしまう。
痛々しく膝を抱えた寧々を
次々追い越してゆく敵チーム。
寧々が、転んでしまった―――。