素直になんかなれない
もう、終わりだと思った。
優勝は、もうないって。
そう思ったのは
多分、俺だけじゃなかったと思う。
……でも、寧々は諦めなかったよね。
立ち上がり
真っ赤になった膝を引きずって
真っ直ぐ、俺の元に走って来た寧々。
そして――――。
「…っ、お願い…っ、昴っ!」
寧々の手から俺の手に託された
赤い、バトン。
触れた指先は
僅かに震えていて。
…何だよ、呼べるんじゃん。
“昴”
俺はニッと口元を引き上げ
地面を蹴り上げた。
遠くに見えた、敵の背中を追い掛けて。
ただ、真っ直ぐに。
ただ、無我夢中に。
声援で埋め尽くされたグラウンドを、走り抜けた。
そして、地面を蹴る度
ハッキリとしてゆく気持ち。
…俺、寧々が好きだ―――。